せっかく気に入って手に入れたロードバイクも定期的なメンテナンスを怠っては見た目だけでなく各部の動きも新品のときと比べると徐々に悪くなってしまいます。乗っていて楽しく無いばかりでなく、トラブルの原因にもなります。
逆に、しっかりとメンテナンスの行き届いたバイクは気持ちよく乗れるだけでなく、周りの自転車仲間たちからも一目置かれるでしょう。
SNSやネットの記事でもメンテナンスは大事!という言葉は良く目にするものの、実際に自分でやってみようとすると「難しそう…」、「何を揃えたら良いか分からない…」と感じる方も多いのでは無いでしょうか。
メンテナンスの中でも今回は「洗車と注油」にフォーカスして、用途別にケミカルの選び方をお伝えし、おすすめのケミカル類について解説します。今までメンテナンスに不安を感じていたあなたも、これを読めばきっと一人前に愛車の手入れが出来るようになるはずです。
ケミカル選びのポイント
ロードバイクショップのケミカル売り場に足を運んだことのある方はその種類の多さに驚かれた経験もあるのではないでしょうか。
各メーカーがニーズや用途に合わせて様々な製品を揃えているため、知識が無い状態ではどれを選んだら良いか分からないのも当然。
逆に言えば、正しいケミカル類を選ぶことが出来ればメンテナンスの質が上がって作業が楽しくなることも間違いありません。
それではどのようなポイントから選べばいいでしょうか?
自転車のメンテナンス環境は?
ケミカル選びには、どのような環境で愛車のメンテナンスを出来るかが関わってきます。
プロチームやショップのメカニックのようにスペースに制限がなく、水洗いも自由にできるような環境であればあらゆる種類のケミカルでも使うことが出来るかもしれません。
しかし洗車の環境は自宅の庭の場合もあればマンションのベランダや室内など様々。
ケミカルの中には洗浄力が強い代わりに水洗いが必要なものなどもあるので、自分の洗車環境によってどんなケミカルが使えるかが変わってくるため注意が必要です。
乗る頻度や車種、目的
これは主にチェーンオイルを選ぶ時に関わってきます。チェーンオイルは種類によって寿命や抵抗の大きさが変わってくるため、自分に合ったものを選ぶことが大切です。
例えば、通勤で毎日走る人がすぐに油膜の切れてしまうオイルを選んでしまったら、メンテナンス頻度が増えてしまい現実的ではありません。
また、ヒルクライムでタイムを狙っている時に耐久性が高く走行抵抗が大きくなるものを使ってしまうのは勿体ないでしょう。
乗る頻度や車種(ロードバイクかグラベルバイクか、など)、目的(トレーニング、通勤、レース…)によって自分に合ったオイルが分かってくるでしょう。
チェーンオイルが切れたり、汚れが付きすぎた状態で乗っているとチェーンやスプロケットを始めとしたドライブトレイン周りの寿命を縮めてしまいますので、正しいオイルを正しい頻度で注油することが大切です。
おすすめのケミカル10選
ケミカルには様々な分類がありますが、この記事では以下の3種類に分けて紹介していきます。
なお、ケミカルの種類はメーカーによって呼び方は様々のため、あくまで当記事での分類となることをご承知おきください。また、この分類の中の複数の機能を持つようなケミカルもあります。
①クリーナー類…自転車の全般的な洗浄に使われる。駆動系にも使用可能だが、車体の広い範囲を洗浄するのが主な目的。
➁ディグリーザー類…チェーンやスプロケットなど、油や埃によるしつこい汚れを落とし、脱脂(degrease)することを目的としたもの。クリーナー類よりも洗浄力が強いが、塗装やゴムなどに影響を及ぼす場合も。主に速く乾くタイプとゆっくり乾くタイプがあるため、洗浄場所やどれぐらい汚れを落としたいかで選ぶとよい。
③チェーンオイル類…ディグリーザーで汚れを落としたあとは、チェーンなどの金属の駆動部品に潤滑油であるオイルを注油します。オイルにも様々な種類があり、潤滑性能や耐久性、汚れにくさなどに違いがあるため、用途によって選ぶことが大切。
前置きが長くなりましたが、実際の商品紹介に入ります!
クリーナー類のおすすめ3選
WAKO’S(ワコーズ) /フォーミングマルチクリーナー 1,636円
-水なし洗車が魅力の泡タイプのクリーナー-
マンションなどにお住まいの人の悩みで多くあるのが、洗車する時に水が使えないというもの。ワコーズの「フォーミングマルチクリーナー」は水で洗い流す必要がなく、水が使えない方にも安心してオススメできます。
使い方は簡単で、洗浄箇所に直接スプレーし、泡が消えたら乾いた布で拭き取るだけというもの。
油汚れに対する洗浄力はディグリーザーには敵いませんが、自転車全体に使えるお手軽さと期待以上の汚れの落ちは魅力的。
一本持っておくだけで自転車の洗浄のほとんどがこなせてしまうでしょう。
MUC-OFF ( マックオフ ) /NANO TECHサイクルクリーナー 1,800円
-水洗いでがっつり洗車したい派に-
ピンクの液剤が特徴的なマックオフの「サイクルクリーナー」は、水あり洗車が出来る環境で大活躍の洗浄剤。これこそケミカル!というワイルドな見た目通りの高い洗浄力を持ちつつ、自転車の塗装やシール類は傷めない、優しさも兼ね備えたクリーナーです。
スプレータイプのクリーナーを吹き付けた後、数分待つことでナノサイズの粒子が浸透します。スポンジやブラシで汚れを落として水で流せば、本格的な洗車ならではの「洗った感」が得られるでしょう。
シュアラスター/ゼロフィニッシュ 2,073円
-カーケア用品ブランドによる、使いやすさ満点のコーティング剤-
クリーナーで車体を綺麗にした後、ひと手間かけてコーティング剤で仕上げるとツヤが出て汚れも付きにくくなるためオススメです。
色々なメーカーがコーティング剤を発売している中でも、シュアラスターの「ゼロフィニッシュ」を紹介します。
シュアラスターは車好きの人には馴染みの深いカーケア用品の老舗ブランド。近年はJCL(ジャパンサイクルリーグ)のオフィシャルパートナーを務めるなど自転車業界でも人気を集めています。
そんな中でも「ゼロフィニッシュ」は洗浄からコーティングが一本でこなせる優れもの。
スプレータイプで施工はとても簡単。車体に吹き付けてクロスで拭き上げるだけでムラ無く綺麗に仕上げることが出来ます。 施工は簡単でも綺麗なツヤと防汚効果が約2ヶ月持続。一本持っているだけで洗車が楽しくなること間違いありません。
【番外編】DIXNA(ディズナ)/いつも自転車きれいで元気!514円
ここまで紹介してきたクリーナー類は、どれも使いやすさに考慮した製品ですが、少しもケミカル類を使うことが出来ない環境や、遠征先など少しでも荷物を減らしたいシーンもありますよね。
そんな場面で活躍するのが拭くだけタイプのクリーナー。こちらのディズナのクロスは不織布に洗浄剤と撥水剤が含ませてあるため、簡単・手軽に愛車をキレイな状態に保つことが出来ます。
ディグリーザー類のおすすめ3選
WAKO’S(ワコーズ) /チェーンクリーナー 1,567円
-自転車のドライブトレインの洗浄に特化-
名前の通り、チェーンの洗浄に非常に適した製品ですが、スプロケットやディレイラーなど駆動系のパーツに幅広く使うことが出来ます。
チェーンの洗浄に嬉しい豚毛のブラシ付きです。なんでもこのブラシもメーカーでテストを繰り返した結果自転車チェーンの洗浄に最も適したものを選んでいるのだとか。
遅乾性のため、スプレーでチェーンに吹き付けたあとはじっくりとブラシで汚れを浮かせたあと、前述のフォーミングマルチクリーナーで拭き取るか、水で洗い流しましょう。
WAKO’S(ワコーズ) /BC-9 ブレーキ&パーツクリーナー 1,509円
-あったら何かと便利な速乾タイプのクリーナー-
BC-9の特徴は何と言っても「速乾タイプ」であること。ゆっくり乾くタイプに比べて純粋な洗浄力では敵わないものの、ディグリーザーの成分自体がすぐに乾燥して残らないのが特徴。
1で紹介したWAKO’Sチェーンクリーナーでチェーンの汚れをしっかり分解したあとの洗浄に使ったり、分解したパーツの油汚れを除去したりするのに便利です。
ホームセンター等に売られている安価なパーツクリーナーはノズルを毎回抜き差しする必要があるものが多いですが、こちらはその必要がなくメンテナンスの手間が省けます。
プラスチックやゴムを傷めにくいため、ちょっとしたパーツの洗浄などにもおすすめです。
ACOR(エーカー)/エコロジー マルチディグリーザー 1,683円
-環境に配慮しながら強力な洗浄力-
ディグリーザーの隠れた名品とも言えるのがこの「エコロジー マルチディグリーザー」。成分解率99%を誇るだけでなく、チェーンやスプロケットなどにこぶり付いたしつこい油汚れを強力に分解します。
使い方としては、汚れの付いた部分に必要分を付け、ブラシでこすって洗浄するのがおすすめ。黒ずんだ汚れがどんどん落ちていきます。
揮発性が低いタイプのため、洗浄後は水で洗い流すのを忘れないように。処理水は白く乳化し微生物によって分解されるため、生活用水として排水可能です。1滴ずつ垂らせる容器で使いすぎることが無いため、環境だけでなくお財布にもエコ(経済的)なのもポイント。
チェーンオイルのおすすめ4選
Vipro’s(ヴィプロス) /レイキッシュ 1,750円
-チェーンをキレイに保ちたいならコレ-
チェーンオイルを選ぶ時に大事にしたい性能の一つが「汚れにくさ」。潤滑性能の高いオイルを使用していても埃で汚れた状態で乗っていては本来の性能を発揮できません。
また、車にロードバイクを積む際もチェーンが綺麗な状態にしておきたいですよね。そんな方にぴったりなのがこの「レイキッシュ」フッ素系の低粘度オイルのため、チェーンやスプロケットをしっかりコーティングしつつも、汚れを寄せ付けません。
低粘度のため雨に弱かったり、比較的高い頻度で注油する必要がありますが、この汚れにくさはデメリットを補ってあまりある物があります。泥の付着を嫌うオフロードにもおすすめです。
WAKO’S(ワコーズ) /チェーンルブ 1,591円
-チェーンオイルの超定番品-
ロードバイクショップに行けば扱っていない店は無い言っても良いぐらいに浸透しているワコーズのチェーンルブ。人気の秘密は何と言っても扱いやすさと性能のバランスにあるのではないでしょうか。
また、拭き取るタイミングや量によって性能をコントロール出来るのも特徴。
吹き付けたあと、10分ほどで拭き取ればチェーンは軽く、汚れもつきにくくなります。反対に、一日おいてから拭き取れば耐久性や変速ショックの少ないリッチな仕上がりにすることが出来ます。走行シーンによって調整できるこのチェーンルブが人気なのも頷けますね。
水置換性があるため、濡れた状態のチェーンに注しても潤滑性能を発揮してくれます!
MUC-OFF ( マックオフ ) /C3ドライ セラミックチェーンルブ 1,800円
-究極の性能を求めるなら-
セラミックタイプのこのチェーンルブは、非常に高い潤滑性能と耐久性を両立させた優れもの。
しかし、この性能の恩恵にあずかるにはそれなりの手間が必要になります。まずはチェーンの汚れや古いオイルを「完全に」脱脂、洗浄して乾燥させる必要があります。その上でチェーンの一コマずつに注油を行います。拭き取ったあとは成分がチェーンのピンの奥に浸透するまで数時間おきます。
ここまでやってようやく本来の性能を発揮することが出来るのです。
しかし、ここまでの記事で得たケミカル類の知識があれば、きっと出来るはず。チェーンにしっかりとオイルが浸透しているかを確認するためのUVライトが付属しているというのも、遊び心と実用性を兼ねていてなんだか嬉しいポイント。
雨天性能を高めたウェットタイプも販売されています。
NASKALUB(ナスカルブ) 2,813円
-あらゆる状況に対応する万能オイル-
東京都台東区に本社をおく化研産業㈱が送る、極圧潤滑剤のナスカルブ。ここまで紹介してきたチェーンオイルの中では唯一、自転車専用品と謳っていない製品です。
非専用品と聞いて少しがっかりする方もいるかも知れませんが、裏を返せばどんな用途でも優れた仕事をするほど、基本性能が優れているということ。高い圧力下でも優れた潤滑性能を発揮するこのチェーンルブは、耐久性が高く雨にも流れにくいのが特徴。
自転車のチェーンは人力のためそれほど高い負荷がかかっていないかと思いがちですが、人間のペダリングは機械のようにスムーズではないため、意外と高い圧力がかかっているのです。ロングライド時の持ち運びに便利な20mlボトルのタイプがあるので、サドルバッグに忍ばせることも出来ます。
まとめ
この記事ではロードバイク用のケミカル類の中でも洗車と注油にフォーカスし、選び方から具体的なおすすめ商品10選までを紹介してきました。
ケミカルの世界はとても奥が深く、ここでは紹介しきれないぐらい沢山の製品があり、中にはマニア心をくすぐる尖ったものも…
また、今回取り上げなかったグリスや組付け用のコンパウンドなどにも、本当に沢山の種類があります。
そんな中でも、自分の洗車の目的やどんな環境で洗車を行うかがはっきりしていれば、どんなケミカルが合うのかが分かってくると思います。最初は失敗することもあるかもしれませんが、トライ&エラーを繰り返して成長していくのもロードバイクという趣味の醍醐味の一つではないでしょうか。
ここで得ていただいた基本的な知識を元にご自身にピッタリのケミカルを選んでいただき、実践して頂ければ幸いです!
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