ロードバイク業界では、最近はカーボンを使った製品が増えてきましたね〜。
フレーム、ホイールはもちろんのこと、ペダルやクランク、ディレイラーにまでカーボンパーツが使われるのが普通になりました。
カーボン素材が一般化したのはここ十数年くらいのことです。
軽量で強度のあるカーボンファイバー素材はロードバイク以外でも航空や宇宙開発など幅広い分野で使われるとても重要な素材で、この先もカーボン素材の需要は増え続けていくと予想されています。
今ではプロロードレーサーだけでなくホビーライダーにとってもフルカーボンフレームが主流と呼べる時代になりましたが、
ロードバイクフレームに使われる素材は、カーボンだけじゃありません。
代表的な素材が、アルミ・クロモリ・チタンなどです。
ロードバイクの素材の違いがよくわからない!
最近ロードバイクに乗り始めた友達がカーボンパーツ集めに熱狂していて、「とにかくカーボンがいい!」というように “カーボンフリーク” 状態なんです。
その友人に「カーボン以外の素材にもいいとこあるんだよ!」ということを伝えたくて、カーボンとその他の「ロードバイクフレームに使われる素材」のメリット・デメリットを深掘りしてみました。
この記事をご覧のあなたも、カーボン以外の素材にも詳しくなって、「違いがわかるひと」になりましょう!
今回紹介する素材はこれ!
・アルミ
・クロモリ
・カーボン
・チタン
・スカンジウム(?)
それでは早速いってみよう!
1 安価でメジャーなアルミ素材

趣味でロードバイクを始めたい人にもっとも選ばれているのがアルミです。
初心者に選ばれる理由が「価格の安さ」。アルミ自体が比較的安価な素材であることに加え、加工が容易にできるため価格が抑えられます。
価格が安く、メンテナンスが簡単なので、エントリーモデルのロードバイクには大抵アルミ素材がメインに使われてます。
金属の中では比重が軽く、スポーツ自転車業界で以前の主流だった「クロモリフレーム」からシェアを奪いました。
キレのある乗り心地。
固く、キレのある乗り味がアルミフレームの特徴。
フレームが頑丈で歪みが少ないのでペダルを踏み込んだ力がダイレクトに伝わる感覚があります。
地面の細かい振動が伝わりやすいので、カーボンフレームなどと比べると快適性は劣りますが、あえてしなるような形にして振動吸収を狙ったアルミロードバイクもあります。
メンテナンスは簡単だけどしっかり管理して。
メンテナンスが簡単と言いましたが、アルミは金属なので時間が経つとどうしても経年劣化がおきます。
何十年も使っていく場合は金属疲労で折れたり壊れることがあります。
雨にさらすなどのずさんな管理をすると内部から錆びてしまう場合もあるので、最低限の気遣いはしてあげて下さい。
アルミ素材の中にもグレードが複数あるよ。
ひとくちに「アルミフレーム」と言っても、2000系・6000系・7000系など、数種類のアルミ素材の種類があります。
剛性の高い(強度が高いので素材を薄くできる)7000系アルミ合金ではカーボンフレーム並みに軽くできる反面、安価なアルミ素材を使ったアルミフレームではかなり重さが目立ちます。
アルミ素材のバイクを選ぶ際には、使われているアルミの種類も必ずチェックしましょう!

アルミフレームの強み
メンテナンスが楽
扱いが楽 安価 剛性がある(硬い) |
アルミフレームの弱み
地面の振動・衝撃が伝わる
経年劣化で時間が経つと壊れることがある 安価なアルミフレームは重い |
2 クラシックで大人なクロモリ素材
昔から長きにわたって自転車フレームの素材として使われてきたのがクロモリです。
クロモリとはクロームモリブデン鋼の略で、鉄に「クロム」と「モリブデン」を加えた合金です。
しなやかな乗り心地に魅了される。
クロモリは加工がしやすく安価で、アルミと違って素材がしなやかであるのが特徴です。
クロモリフレームのロードバイクに乗るととても乗り心地が良いと感じます。
アルミとクロモリのロードバイクで同じ舗装路を走行すると、ハンドルとサドルへ伝わる微振動が、クロモリの方が少ないことがわかります。
振動が控えめなので、一度加速してしまえば20km/hくらいの中速域で長時間走行するのがとても楽に感じます。
反面、剛性を確保するためには素材を厚くする必要があるため、若干重いフレームとなってしまいます。乗り心地と若干の重さはトレードオフですね。
メンテナンス次第で大きな違いが。
金属のため腐食が早く、鯖やすいので、雨にさらされた場所での保管はしないように!
しっかりメンテナンスをし、定期的にオーバーホールを行えば数十年の長い間乗れると言われているのがクロモリバイクです。
メンテナンスを重ねるうちに味がでてきたり、愛着も深くなるでしょう。
長年革靴をメンテナンスするような。ライダースジャケットにシワができて味が出るような。
落ち着いた大人のお洒落。
剛性を確保できて、重量とのバランスが良いために、クロモリバイクは基本的に細い円柱形のパイプを溶接した形になります。
この見た目が独特の雰囲気を放っているので、クロモリバイクを愛するファンも多くいます。
クロモリ素材のロードバイクの価格は安いもので10万円以下、緻密な溶接にこだわった職人手作りのフレームなどでは30万円を超えるものもざらに存在し、価格差が大きいです。

クロモリフレームの強み
快適な乗り心地
特徴的なフォルム こだわりの製法(高級モデル) |
クロモリフレームの弱み
重い
腐食が早い 価格差が大きい |
3 高効率を極めたカーボンファイバー素材
今、プロレースではほぼ100%カーボン素材バイクが使われています。
別名、炭素繊維強化プラスチックで、クロモリに比べて圧倒的な軽さと剛性の高さ、そして造形の自由度が高いのが特徴です。
エアロロードバイクのような縦に長く横幅の狭い空力性能の高い自転車が作れるようになったのはカーボンのおかげ。
カーボン素材のロードバイクは本当に多彩な形状があって、各メーカーの個性が現れてとてもおもしろいですね。
アルミやクロモリと比べると価格の高い素材ですが、最近ではカーボン繊維の安定供給と生産技術が向上し、価格は下がってきています。
トータルで「乗りやすい」
カーボンフレームは衝撃吸収性が高いと言われています。路面の細かい衝撃をフレームが吸収してくれるため、アルミなどより快適な乗り心地で走行することができます。
それでいて剛性が高いので、ペダルを強く踏み込んだ時に力を効率よく伝達することができます。
「アルミのようにキビキビ進み、クロモリのように乗り心地が良く、かつ両者より軽い」のがカーボン素材のロードバイクの特徴です。
取扱いとメンテナンスには気をつけて。
カーボンは一点に強い衝撃を与えると、金属のように凹んだりせず、バリッと割れてしまいます。(クラック)
クラックが起きると、それだけでフレームが使い物にならなくなってしまい、基本的には修理をすることができません。
カーボン素材のロードバイクは基本的にアルミと比べて価格が高く、安くても完成車で20万円は下りません。
落車したら壊れる危険性が高いことと、高性能な乗り心地のトレードオフをどう捉えるかは人それぞれ。
カーボンファイバーは理論上劣化しないのですが、カーボン繊維同士を固めるために使用されている樹脂が湿気や紫外線によって劣化するので、取り扱いやメンテナンスには気を使う必要があります。

カーボンフレームの強み
とても軽い
振動吸収性がある 特徴的な造形が可能 剛性が高い |
カーボンフレームの弱み
価格が高い
メンテナンスが重要 取り扱いに注意 強い衝撃を与えると割れる |
4 錆びない金属。チタン素材
鉄の比重が7.8、チタンの比重が4.5と、チタンは鉄に比べて4割近く軽い金属です。
ちなみにアルミの比重は2.7で、チタンはアルミよりもかなり重いのですが、チタンはアルミよりも圧倒的に丈夫な素材なので、フレームを作る際により薄くすることができます。
結果的にアルミフレームよりもチタンフレームの方が軽く作ることができるのです。
チタンフレームは高い剛性を持ち、それでいてクロモリ同様快適な乗り心地と言われています。
いつまでも変わらない性能を発揮
錆びにくく耐久性が高いので、10年以上は変わらない性能で乗れると言われています。クロモリやアルミでは、だんだんフレーム性能が落ちていきますから、これは大きな強みです。
チタンは加工が難しい金属なので、綺麗に成型するためにコストがかかります。見た目はクロモリとほぼ変わらないのに、とても高価です。有名なDEROSAのTITANIOだとフレームセットで70万から100万程…
家電のイメージの強い日本の電化製品メーカー、パナソニックもチタンフレームを製造していて、価格は完成車で40万円程から。金銭感覚が狂う…ああ。
少なくとも、チタンフレームに乗っていると聞けば話題になります。

チタンフレームの強み
軽くて高剛性
乗り心地が良い クラシカルな見た目 耐久性が高い |
チタンフレームの弱み
価格が高い
クロモリフレームと似ているので間違えられる |
アルミの上位互換。スカンジウム素材
とてもマイナーで珍しい素材なのですが、一部のメーカーの高級メタルバイクラインナップとして、スカンジウムフレームというものが販売されているようです。
スカンジウムはレアメタルに分類される遷移金属の一つで、レアメタルの中では最も原子量が小さい元素です。価格も高価で、日常ではあまり触れ合う機会はないかもしれません。
アルミでは届かない剛性と軽さ
スカンジウムフレームは、先述の7000系アルミ合金にスカンジウムを少量添加することで強度を高めた、アルミニウム-スカンジウム合金を使用したフレームです。
アルミフレームと似たような、高い剛性感のある硬い乗り心地で、グレードの高いアルミフレームより更に硬く、更に薄く、更に軽量になっています。
もちろんですが値段は跳ね上がります。
DEROSAのSCANDIUMはフレームセットで50万円程。
とても高性能なフレームのようですが、今では周りと違ったモノ好きくらいにしか流通していない非常に珍しい素材です。今後メジャーになって来ることはあるのでしょうか…

エディ・メルクス AMX-5 しなやかなバネ感を味わえるスカンジウム合金バイク
スカンジウムフレームの強み
高い剛性
力の伝導率の高さ 未知の領域という価値 |
スカンジウムフレームの弱み
高価
未知の領域という不安 |
いろいろな素材のそれぞれの良さを、知る
カーボンは、現状ロードバイクの素材として最も優れた素材と言えるかもしれませんが、カーボンにも、その他の素材にも良いところ悪いところがあることが伝わったでしょうか。
様々な素材の特徴を理解することで、自分が乗っているロードバイクの良さを感じることに繋がると思っています。
これからどの素材のロードバイクを買おうか迷っている人に対しては、今回紹介した素材の特徴を参考にして、どの素材が自分の乗り方や目的に合っているかを選んでみて下さい。
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